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クロッシング CROSSING / 2008 / South Korea

クロッシング

STORY

2007年、北朝鮮。炭鉱で働く元サッカー選手のキム・ヨンスは、妻のヨンハと11歳になる一人息子・ジュニとともに、貧しいながらも幸せに暮らしていた。しかしある日、妊娠中のヨンハが肺結核で倒れてしまう。医療品が不足する北朝鮮では、風邪薬さえ容易に入手できない。ヨンスは妻の病気を治すため、決死の覚悟で中国との国境を越えた。中国では、脱北者は容赦なく強制送還させられる。それはまさに死を意味していた。薬の費用を稼ぐため材木伐採の仕事に就いたヨンハだったが、不法就労がバレてしまい、公安から追われる身に。彼は薬を手に入れるまでは帰れないと、潜伏生活を続ける。そんななか、北朝鮮の実情を暴露すれば報酬が得られるという話が舞い込んだ。インタビューに応じる決心を固めたヨンス。それが、愛する妻子との永遠の別れになるとも知らずに…。
from:amazon

About a young boy in North Korea who wants to find his father who is forced to become a refugee in South Korea.

監督
Tae-gyun Kim
出演
In-Pyo Cha, Myeong-cheol Shin, Young-hwa Seo, In-gi Jeong

IMDb Rating:

7.5

REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」

凄まじい衝撃。映画の真価のひとつに、異国の人々の暮らしに触れ得ることがある。それらは世界の多様な価値観を教えてくれ、人生・社会への視野を広げてくれる。同時にまた、描かれた民衆が独裁政治に苦しめられている場合は、鑑賞後に義憤や無知でいたことへの恥、動揺、様々な感情に包まれる。
『クロッシング』は北朝鮮からの複数の脱北者に対する聞き取り調査をもとに脚本が書かれた社会派作品。主人公の炭鉱夫は、妊娠中の妻が結核になったため、薬を求めて中国に密出国し戻って来ようとする(韓国なら保健所が無料で配っている薬。北朝鮮では命がけで国境を越えないと手に入らない)。だが、予期せぬ出来事が起き、故郷の妻子との再会がなかなか果たせない。不安になった11歳の息子は父を探して越境を試みるが…。食料不足で飢餓状態の農村、文字通り“生き地獄”の強制収容所、軍人たちの残酷な暴力、子どもであっても射殺される国境線、戦慄の連続だ。

正式な国交がないため、日本人は北朝鮮の一般市民の暮らしぶりを知らない。まして政治犯の収容所の実態など知りようがない。だから、北朝鮮という言葉で連想されるのは“金正日のみ”ということになる。だが、この映画を観たことで、圧制下で生きている北朝鮮の民衆をイメージすることが可能になった。これは重要なことだ。民衆が望むものはとても小さな幸せなのに、それすら踏みにじられていく不条理。先述したように、入念な聞き取り調査で再現された半ドキュメンタリー的な要素もあり、ぜひ多くの人に観て欲しい。日本のすぐ隣りで、しかも現在進行形でこの悲劇が日夜生まれている。脱北者問題を取り扱っているため、中国、モンゴル、韓国にて秘密裏にロケが行われたという。河原遊びをしているモノクロの回想シーンで涙腺決壊。
※閉口したのは悲しみを強調しようとする扇情的な音楽。映像だけで十二分に心を動かされるのに…。韓国映画の特徴というか、あれがなければ満点プラスαだった。
※「イエスは南朝鮮にだけいるんですか?人を救いに来たのに、こんな不公平でいいんですか?神様も豊かな国だけ?なぜ北朝鮮を放っておくんですか?」が切実。
from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。

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